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広島地方裁判所 昭和44年(わ)145号 判決 1973年3月27日

本籍

広島県安芸郡蒲刈町宮盛五五四番地

住居

広島県福山市佐波町五一八番地の四

病院経営者、医師

大林新

明治三一年九月二六日生

右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官清水鉄生出席のうえ審理をして、次のとおり判決する。

主文

被告人を罰金四〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、福山市佐波町五一八番地の四に居住し、昭和二七年一二月以降同町五七六番地の一において福山仁風荘病院を開設し、昭和二九年六月から昭和四〇年末までは倉敷市中島二四一五番地の二において分院として倉敷仁風病院を開設し、医業を営んでいたものであるが、自己の所得税を免れる目的をもって、

第一、昭和四〇年分の正規の総所得金額が四六、六九八、三九〇円で、これに対する納付すべき正規の所得税額が一八、〇五二、七七〇円であったのにかかわらず、公表帳簿に架空賄費、架空又は水増し人件費を計上する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ、所得税の累進税率を回避するため、倉敷仁風荘病院にかかる所得を除外し、昭和四一年三月一二日福山市東桜町五番一一号所在福山税務署において、同税務署長に対し、昭和四〇年分の総所得金額が二一、四四六、七二四円で、これに対する納付税額が四、九三八、七一〇円である旨の、また右倉敷壮病院にかかる昭和四〇年分の所得は妻大林貞子に帰属するものとして、同女名義のもとに、同月一五日倉敷市幸町二番三七号所在倉敷税務署において、同税務署長に対し、総所得金額が一六、二三三、五一〇円で、これに対する納付税額が四、五五五、三七〇円である旨の、それぞれ虚偽の確定申告書を提出し、もって昭和四〇年分の前記正規の所得税額一八、〇五二、七七〇円と右申告税額との差額八、五五八、六九〇円を免れ、

第二、昭和四一年分の正規の総所得金額が二四、四三一、九一八円で、これに対する納付すべき正規の所得税額が六、〇四五、八八〇円であったのにかかわらず、公表帳簿に架空賄費、架空又は水増し人件費を計上する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ、昭和四二年三月一三日前記福山税務署において、同税務署長に対し、昭和四一年分の総所得金額が一六、三二〇、三三五円で、これに対する納付税額が一、三七七、六八〇円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって昭和四一年分の前記正規の所得税額六、〇四五、八八〇円と右申告税額との差額四、六六八、二〇〇円を免れ、

第三、昭和四二年分の正規の総所得金額が二三、五五九、七二六円で、これに対する納付すべき正規の所得税額が四、九〇二、八〇〇円であるのにかかわらず、前同様に不正な方法により所得を秘匿したうえ、昭和四三年三月九日前記福山税務署において、同税務署長に対し、昭和四二年分の総所得金額が一三、九一四、四六六円で、これに対する納付税額が源泉所得税の納付額を差引き赤字五六五、一五八円である旨の虚偽の確定申告書を提出し、もって昭和四二年分の前記正規の所得税額四、九〇二、八〇〇円と右申告税額との差額五、四六七、九五八円を免れたものである(なお、右各所得の内容は別紙1ないし3の各修正損益計算書のとおりであり、各税額の計算は別紙4の脱税額計算書のとおりである。)

(証拠の標目)

判示全事実につき

一、被告人の当公判廷の供述

一、被告人の検察官に対する供述調書

一、被告人に対する収税官吏の質問てん末書七通

一、裁判官の証人守田日出夫に対する尋問調書

一、井上道彦の検察官に対する供述調書

一、大林貞子(四通)、井上道彦(七通)、井上韶子、坂口勝朗、坂口タミヨ、桐山保子(二通)、守田日出夫(六通)、宮本茂子、植村千鶴(二通)、守田允子、西川隆、天満亀行に対する収税官吏の各質問てん末書

一、井上道彦作成の「架空仕入について」、「賄費について」、「架空出張旅費等及び簿外経費について」、「名義借医師学会架空出張旅費について」、「公表人件費のうちの架空人件費、水増し人件費について」、「簿外現金から支出した簿外人件費について」と題する各上申書

一、井上道彦、桐山保子連名作成の上申書

一、村上光範、児玉實、中村登美子、井上韶子、井上フミ子、小林房子各作成の上申書

一、社団法人日本精神病院協会会長渡辺栄市作成の「出張旅費支給報告」と題する書面

一、商工組合中央金庫福山支店長作成の「割引商工債券の売出価額について」と題する書面および証明書(三通)

一、山田龍雄、桐山保子、深川ツネ子、片岡要子、森田要各作成の「特別賞与について」と題する書面

一、椋田正和作成の調査事績報告書三通

一、山一証券株式会社福山支店小宮山欽一、同上野靱男各作成の証明書

一、野村證券株式会社福山支店長早見周作作成の証明書

判示第一事実につき

一、守田日出夫作成の「架空賄費の件について」(二通)、「架空人件費の件について」、「簿外人件費の件について」、「架空給料より控除して納付した各種税金並びに社会保険料について」と題する各上申書および昭和四三年九月一九日付上申書

一、エーザイ株式会社取締役経理部長岩本寿雄作成の取引証明書

判示第一、第二の各事実につき

一、塩野義製薬株式会社経理部作成の「取引証明書の提出について」と題する書面

一、吉富製薬株式会社作成の「取引証明書依頼に対する回答について」と題する書面

一、株式会社大宝組取締役社長新宅萬吉作成の上申書

判示第二、第三の各事実につき

一、井上道彦作成の「昭和四二年職員慰安旅行経費の水増について」と題する上申書

なお、押収にかかる各書面(押収番号昭和四五年押第四五号、各頭書の算用数字は押収品符号を表示)

一、(1)薬仕入リベートメモ綴一綴、(2)「仁風荘」の表題ある帳簿一冊、(17)封書(井上道彦宛、昭和四〇年七月五日付)一通、(18)納品書綴(倉敷病院分)一綴、(19)納品書綴(福山病院分)一綴、(20)仕入台帳綴(西川商店関係)一綴、(21)金銭出納帳一冊、(22)ないし(25)賄納品書綴四綴、(26)(27)(28)買掛帳三冊、(29)仕切複写簿等綴一綴、(30)買掛金台帳一冊、(31)給与特別関係書綴一綴、(32)給与特別関係書類綴一綴、(33)金銭出納計算書一枚、(36)ノートブック一冊、(37)領収証等綴(三九枚)一綴、(38)ないし(41)経費明細帳四冊、(42)所得税源泉徴収簿兼賃金台帳一冊、(43)所得税源泉徴収簿兼賃金台帳綴一綴、(47)給与支払明細書綴一綴、(48)給与明細書綴一綴、(49)勤務考課表等綴一綴、(50)給与関係書類綴一綴、(53)給料支払明細書等綴一綴、(64)野村証券株式会社発行の募集債券計算書等綴一綴、(65)商工組合中央金庫発行のワリショウ代金計算書等綴一綴、(66)(67)割引商工債券自動乗換保護預り通帳二冊、(76)大林新にかかる所得税の確定申告書類綴一綴、(77)青色申告者書類綴(自昭和三五年分至昭和四二年分)一通(以上判示全事実関係)

一、(55)試算表等綴一綴、(56)領収書等綴一綴、(57)(58)(59)家計簿三冊、(61)(62)(63)手帳三冊、(68)メモ等綴(八四枚)一綴、(69)仕訳伝票綴一綴、(70)負担不動産贈与契約書一通、(71)負担付不動産贈与契約書一通、(72)金銭消費貸借契約書一通、(73)(74)契約書二通、(75)動産贈与契約書一通、(79)元帳(昭和四〇年度分)一冊、(83)大林貞子にかかる所得税確定申告書綴一綴(以上判示第一事実関係)

一、(54)約束手形等綴一綴、(78)補助簿一冊、(80)仕訳伝票綴一綴、青色申告者書類つづり一冊(以上判示第一、第二事実関係)

一、(82)元帳(昭和四二年分)一冊(判示第三事実関係)

(法令の適用)

判示各所為につき 所得税法第二三八条(各罰金刑選択)

併合罪による合算 刑法第四五条前段第四八条第二項

労役場留置につき 刑法第一八条

訴訟費用負担につき 刑事訴訟法第一八一条第一項本文

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 千場義秋)

別紙1

修正損益計算書

自昭和40年1月1日

至昭和40年12月31日

<省略>

別紙2

修正損益計算書

自昭和41年1月1日

至昭和41年12月31日

<省略>

別紙3

修正損益計算書

自昭和42年1月1日

至昭和42年12月31日

<省略>

別紙4

脱税額計算書

昭和40年分

<省略>

昭和41年分

<省略>

昭和42年分

<省略>

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